株式会社ワールドコーポレーション
業界の“歪み”を救うビジネスモデルで、IPOの、その先へ
建設業界向けの技術者派遣というビジネスで、2008年の設立以来急成長してきた株式会社ワールドコーポレーション。IPOを実現するために、アドバンテッジパートナーズ(以下、AP)に声がかかり、投資を実行することになりました。建設マーケットの展望やワールドコーポレーションの優位性、そしてIPOとその先に向けた成長戦略について、担当プリンシパルの西村隆志が語ります。
(2020年03月インタビュー記事を元に編集)
この記事のポイント
- 建設業界の“歪み”を救うビジネスモデル。
- 経営陣の想いに寄り添うGrowth支援型プロジェクト。
- IPOの先まで見据えた、縦の成長と横の成長。
基本情報
- 投資時期:2019年11月~
- 業種:建築関連業務に関する技術者アウトソーシング事業、建築関連作図事業等
- 企業タイプ:非上場企業
- 背景:IPOに向けた管理体制構築と成長戦略の立案・実行支援
中長期的な需要はあるのに、担い手となる若手がいない。
ワールドコーポレーションは、建設業界向けに技術者を派遣している企業です。2019年11月に投資を実行したのですが、最初に相談を受けた時は建設業界というマーケットに対してやや懐疑的な感覚を持っていました。東京オリンピックを控えたこの時期が業界のピークなのではないかと。これは多くの方が漠然と感じていることだと思います。しかし丁寧に市場を分析していくと、2つの興味深い事実が見えてきました。
1つは将来的なマーケットニーズ。この数年オリンピックに向けた工事が多数おこなわれてきたことは間違いありませんが、それらが優先された結果として、後回しにされているプロジェクトがかなりある。さらに言うと、高度成長期に建設された高速道路などの老朽化が進んでおり、リニューアル投資が今後本格化していくことも分かってきました。中長期的な需要の底堅さは、かなり確信を持っています。
そしてもう1つが、業界特有の“歪み”です。建設業界は、リーマンショック後に各企業が採用を絞り込んだ影響で、業界全体として若手人材が不足している。技術者の高齢化が進んでいると言ってもいいでしょう。それに対してワールドコーポレーションは、中堅・ベテランの人材ではなく未経験の若手を採用し、必要な教育を実施した上で派遣する形式をとっています。絶対数の少ない若手経験者の採用は大変ですが、未経験者であれば十分採用できるので成長性も高い。次世代の社会インフラづくりを担う若い技術者が不足している建設業界の歪みを解消することにも繋がります。成長性も社会的意義も高いこのビジネスモデルに興味を抱き、投資させていただくことを決めました。
人の想いに寄り添いながら、IPOの先まで見据えた成長戦略を。
APに与えられたミッションは、数年以内のIPOを実現することです。以前から自力でIPOを目指すかどうか考えたことはあったそうなのですが、今回確実にIPOを実現するためのパートナーとして声をかけていただきました。ただ、我々がお伝えしたのは「IPO自体は問題ありません。しかしそこをゴールにするのではなく、さらにその先の成長までともに目指しましょう」ということです。IPOに向けたプロセスを通じて、会社をもう一段強くすることをご提案しました。パートナーの選定にあたっては複数社から話を聞いておられたようですが、最終的にAPが選ばれたのは、こうした姿勢を評価していただいたからではないでしょうか。
今回の案件は、経営トップも経営幹部もそのまま続投するGrowth支援型のプロジェクトです。PEファンドというと、経営権を完全に掌握して人事もすべて刷新するイメージが強いかもしれませんが、APは企業やそこにいる人々に寄り添うことを大切にしているので、こうしたGrowth支援型の案件もかなり増えてきています。今回も全経営幹部と1on1で対話させていただきましたし、代表とは相談開始から投資実行まで1年近く議論を積み重ねてきました。もともとは100%株式を保有しているオーナー経営者でしたから、代表として続投するとはいえ、ファンドの資本を迎え入れる決断には時間が必要だったのでしょう。
不安に思われている点を一つ一つ解消しながら、決断のタイミングをお待ちしていました。そうしたプロセスを経たからこそ、従業員の方々からも不安の声は出ませんでしたし、経営陣も我々の描いた成長プランに全力で取り組んでくれています。
未経験者の育成というコアバリューは、縦にも横にも拡大できる。
成長戦略としてご提案したのは、IPOに向けた採用と管理の強化に加え、中長期的な縦の成長と横の成長の両輪です。営業ドリブンで成長してきた会社なので、採用手法や定着率の向上にはまだ伸びしろがありました。求人のメディアロケーションや採用プロセスを改善し、従業員の定着率を上げる手法についても順次着手しています。APでは、多店舗展開型ビジネスなど多数のスタッフを雇用して離職をおさえるという事例も数多く経験してきているので、教育やフォロー体制を含めてノウハウが蓄積されています。
縦の成長というのは、建設業界の中で新たな職種の派遣サービスを立ち上げるプランです。建設業界ではこれからテック化が進んでいくと言われているので、そこに対応できる技術者の育成が必要になっていくことは間違いありません。たとえば、これまでは2次元の世界でおこなわれていた施工図の作成やコスト管理が、コンピュータ上に作成された3次元モデルをベースに、自動でシミュレーションされるようになることが予想されています。今までの技術者ではそこに対応できないので、業界全体のテック化・効率化を担う人材の供給機能も深掘りしていきたいと考えています。
そして横の成長は、建設業界以外のマーケットへの進出です。我々が考えるワールドコーポレーションのコアバリューは、未経験者を育成して、技術者が不足している領域に供給すること。だとすれば、建設業界に限らず様々な業界を救うことができるはずです。イメージしやすいのはIT業界でしょうか。すでにエンジニアの不足は顕著ですし、今後本格的なAI時代を迎えればさらに新たな技術を持った人材が数多く必要となってきます。建設業界が第一の柱であることは変わりませんが、第二、第三の柱を加え、さらに強い事業基盤を構築していく予定です。これは今回のプロジェクトに限った話ではありませんが、我々が支援する数年の間に不景気な時代を迎えることは十分にあり得ます。しかしこのチームなら、たとえ逆境を迎えても乗り越えていくことができる。私はそう確信しています。